生命保険について勉強していると、「保険料はできるだけ抑えた方がよい」という考え方を目にすることがあります。
私自身、この考え方には基本的に賛成です。
生命保険は、たくさん入ればよいというものではありません。
自分が亡くなった場合に残された家族が必要とする生活費や教育費などを考え、遺族年金や勤務先からの保障、預貯金や金融資産などを差し引き、それでも不足する部分を民間の生命保険で補う。
必要な保障額を考えたうえで、必要以上の保険料を支払わない。
家計管理という観点から考えれば、とても大切な考え方だと思います。
その意味では、一定期間の死亡保障を比較的少ない保険料で準備できる定期保険は、非常に合理的な選択肢です。
それでも私は、近い将来子どもができたときには、定期保険だけではなく、終身保険への加入も検討したいと考えています。
終身保険は、一般的に同程度の死亡保障を一定期間確保する定期保険と比べると、保険料の負担は大きくなります。
それなのに、なぜ私は終身保険を選択肢に入れているのか。
今回は、生命保険について勉強する中で少しずつ変わってきた、私自身の考えを書いてみたいと思います。
生命保険に求めていたのは「残された家族の生活費」だった
私が生命保険への加入を考える一番大きな理由は、とても一般的なものです。
それは、
自分に万が一のことがあったとき、残された家族が生活に困らないようにすること
です。
もし将来子どもができ、その時点で私が家計を支える大きな役割を担っていたとすれば、私が亡くなることで家計の収入は大きく変わります。
日々の生活費だけではありません。
子どもの教育費や住居費など、その後もさまざまなお金が必要になります。
だからこそ、必要保障額を考えて、公的保障や勤務先からの保障、現在の資産などを考慮しても不足する部分を生命保険で準備する。
以前の私は、生命保険とは基本的にそのためのものだと考えていました。
しかし、FPの勉強を進める中で、もう一つ考えるようになったことがあります。
それが、
自分が築いた資産を、どのような形で家族に残すのか
という問題です。
資産を「増やすこと」だけではなく、「残すこと」を考えるようになった
私はこれまで、投資信託や株式などを利用して資産形成を続けてきました。
もちろん、これらは自分や家族の将来のためのお金です。
資産形成について考えていると、どうしても、
「どれくらい増えるのか」
「どのくらいの利回りが期待できるのか」
ということに意識が向きます。
しかし、家族を持つことや相続について考えるようになって、私の考え方は少し変わってきました。
増やした資産を、最後にどうやって家族へ渡すのか。
ここまで考えて初めて、資産形成は完結するのではないかと思うようになったのです。
預貯金や株式、投資信託などは相続財産になり得ます。
もちろん、資産を相続したからといって必ず相続税が発生するわけではありません。
相続税には、
3,000万円+600万円×法定相続人の数
という基礎控除があります。
相続税の計算では、課税価格の合計額から債務や葬式費用などを差し引き、一定の加算等を行った課税価格の合計額が基礎控除額を超える場合に、原則として申告・納税について考える必要が出てきます。
現在の私が「将来必ず相続税が発生する」と決まっているわけではありません。
これから家族構成も資産額も変わります。
それでも、長期的に資産形成を続けていくのであれば、
資産を増やすことだけではなく、将来どのように家族へ残すのかについても少しずつ考えておきたい。
そう思うようになりました。
相続税は、原則として金銭で納める
ここで私が気になったのが、相続税を支払うためのお金です。
相続税は、原則として申告期限までに金銭で納付します。
一定の要件を満たせば延納や物納という制度もありますが、基本は金銭による納付です。
仮に将来、私が多くの資産を株式や投資信託などで保有していたとします。
資産そのものは十分にあったとしても、
家族が必要とするときに、必要なだけの現金があるとは限りません。
もちろん、預貯金を十分に残しておく方法もありますし、必要に応じて金融資産を換金する方法もあります。
そのため、生命保険だけが解決策というわけではありません。
それでも私は、
自分が亡くなったときに、家族へ一定額の現金を残す仕組みをあらかじめ作っておく
という生命保険の機能に価値を感じるようになりました。
そこで終身保険という選択肢が出てきた
ここで、定期保険と終身保険の違いが重要になります。
定期保険は、一定期間の死亡保障を準備する保険です。
たとえば、子どもが独立するまでなど、特に大きな保障が必要な期間に備えるのであれば、非常に合理的だと思います。
一方、保険期間が終了した後に亡くなれば、その契約から死亡保険金は支払われません。
それに対して終身保険は、契約が有効に継続している限り、死亡保障が一生涯続きます。
私が考えている相続時の資金準備という目的では、
「子どもが独立するまで保障があればよい」
のではありません。
自分が何歳で亡くなったとしても、そのとき家族に一定の現金を残したい。
この目的で考えると、私は終身保険に魅力を感じます。
死亡保険金には相続税の非課税枠もある
さらに、一定の条件を満たす死亡保険金には、相続税上の非課税枠があります。
被相続人が保険料を負担していた生命保険契約の死亡保険金を相続人が受け取る場合には、
500万円×法定相続人の数
までの死亡保険金について、相続税の非課税限度額があります。
たとえば法定相続人が3人なら、
500万円×3人=1,500万円
です。
ただし、
「死亡保険金なら税金がかからない」
という意味ではありません。
非課税限度額を超えた部分などについては、相続税の計算に含まれる可能性があります。
また、この非課税枠を利用できるのは死亡保険金の受取人が相続人である場合で、相続人以外が受け取った死亡保険金には適用されません。
さらに、生命保険にかかる税金は、誰が保険料を負担し、誰が被保険者で、誰が保険金を受け取るのかによって異なります。
契約関係によっては、死亡保険金が相続税ではなく所得税や贈与税の対象となる場合もあります。
そのため、単純に、
「終身保険に入れば相続税対策になる」
と考えるのではなく、契約内容や家族構成、資産状況などを含めて考える必要があります。
私が終身保険に魅力を感じている一番の理由も、「節税できるから」だけではありません。
自分が亡くなったときに、家族へ一定額の現金を残す仕組みを作れること。
そのうえで、契約内容によっては相続税上の非課税枠も利用できる。
私は、この順番で考えたいと思っています。
「定期保険か終身保険か」ではなく、「何のための保険か」
ここまで考えて、私自身の生命保険に対する考え方も少し変わりました。
以前なら、
「同じ死亡保障なら、保険料の安い方が合理的ではないか」
と考えていたと思います。
もちろん、その考え方が間違っているわけではありません。
しかし今は、
保険は価格だけで選ぶものではなく、何のために保障を残すのかから逆算して考えるもの
だと思っています。
子どもが小さい期間に、大きな保障を準備したい。
その目的なら、定期保険や収入保障保険が候補になります。
一方で、
自分が何歳で亡くなっても、家族に一定額の現金を残したい。
その目的なら、終身保険が候補になります。
どちらが優れているという話ではありません。
目的が違えば、適した保険も違う。
私はそこを大切にしたいと思っています。
お金を「増やす」だけでは、人生設計は終わらない
Money Literacy Labでは、これまで投資や税金、社会保障などについて考えてきました。
その根底にあるのは、
お金は人生の選択肢を広げるための手段である
という考え方です。
だからこそ、資産形成も「いくら増やせるか」だけで終わらせたくありません。
自分が築いた資産を何に使うのか。
誰に残すのか。
そして、自分がいなくなった後に、家族がお金のことで困らないために何を準備しておくのか。
そこまで考えることも、お金について学ぶ意味の一つなのだと思います。
今のところ私は、将来子どもができたときには、終身保険への加入を選択肢の一つとして検討したいと考えています。
もちろん、実際に加入するときには、その時点の家族構成、資産額、公的保障、必要保障額、保険料などを改めて確認するつもりです。
今後、考えが変わる可能性もあります。
それでも、
「安いから定期保険」「貯蓄性があるから終身保険」と商品から考えるのではなく、まず自分が何を守りたいのかを考える。
生命保険について学ぶ中で、私はこの順番を大切にしたいと思うようになりました。
※本記事は、筆者自身の生命保険や資産形成に対する現時点での考え方をまとめたものであり、特定の生命保険商品への加入を推奨するものではありません。生命保険の保障内容、保険料、解約返戻金等は商品や契約内容によって異なります。また、相続税や生命保険金に関する税務上の取扱いは、契約者・被保険者・保険金受取人の関係、家族構成、資産状況などによって異なります。制度や税制は今後変更される可能性があります。実際に生命保険への加入や相続対策を検討する際には、保険会社、税理士などの専門家や国税庁等の最新情報もご確認ください。

