保険で「安心を買う」ということ―弁護士費用特約に救われた、ある事故の話

保険に入る意味は、何でしょうか。

生命保険なら、万が一のときに残された家族の生活を支える。

自動車保険なら、事故によって生じた損害に備える。

このように考えると、保険の大きな役割は、予期せぬ出来事によって生じる経済的な損失に備えることだといえます。

しかし、私は以前経験したある交通事故をきっかけに、

保険の価値は、お金だけではないのかもしれない

と考えるようになりました。

自分ではどうすればよいか分からない状況に陥ったとき。

相手との交渉を自分一人で背負うのが難しいとき。

そんなときに、

「専門家に相談できる」

「自分一人で対応しなくてもよい」

という状態があらかじめ用意されている。

これも保険がもたらしてくれる価値の一つだと思います。

今回は、私が大学院生だった頃に経験した交通事故と、そのときに加入していた弁護士費用特約について振り返ります。

なお、この事故は10年近く前の出来事です。当時の契約書類などが現在手元になく、事故後に適用された補償の詳細など、記憶が曖昧な部分があります。

そのため、この記事では当時の補償内容を正確に再現することではなく、この経験を通して私が保険についてどのように考えるようになったのかを中心にお伝えします。

目次

予期せぬ事故は、突然起きた

私が大学院生だった頃の、ある昼下がりのことです。

買い物を終えて車で帰宅し、自宅まであと500メートルほどというところまで来ていました。

交差点の先頭で信号待ちをしていたときのことです。

何気なくルームミラーを見ると、後ろから車が近づいてきました。

ところが、その車はスピードを落とす様子がありません。

そのまま私の車に追突しました。

当然、事故が起こるなどとは考えていませんでした。

幸い、私は大きなけがをすることはなく、事故の発生時刻を確認できる程度の余裕はありました。

しかし、事故後の状況は、私が想像していたものとはまったく違う方向へ進んでいきました。

事故後、想像していなかった事態になった

追突してきた車の様子を確認すると、運転手はなかなか車から出てきませんでした。

すると、その直後に複数の警察車両が到着しました。

警察官が事故車両の周囲に集まり、最終的には窓ガラスを割って対応していました。

その時点では、

「一体、何が起きているのだろう」

という状態でした。

私は信号待ちで完全に停車していたため、当時は、

「自分側に過失はない事故として扱われるのではないか」

と考えていました。

そして、相手側の保険などによって車の損害も補償されるのだろうと、漠然と思っていました。

ところが、実際の状況はそう単純ではありませんでした。

相手は任意保険に加入していなかった

警察署で事情を聞く中で、少しずつ状況が分かってきました。

私の記憶では、追突してきた車は車検が切れており、そのことに関連して警察から追跡されていたようでした。

そして、事故の相手は任意の自動車保険に加入していませんでした。

自賠責保険についても、当時、加入状況に問題があるという説明を受けた記憶があります。

ただし、10年近く前の出来事であり、現在その契約状況を確認できる資料が手元にないため、この点については正確な状況を断定することはできません。

さらに、相手には十分な支払い能力がなく、私の車の損害についても、支払えるのは数万円程度だという話だったと記憶しています。

一方、私の車は事故によって大きく損傷し、最終的には廃車になりました。

ここで初めて、

「事故の相手に責任があったとしても、必ず損害を十分に補償してもらえるとは限らない」

という現実に直面しました。

当時の私には、新しい車を買う余裕がなかった

今振り返ってみても、この事故で特に不安だったのはここです。

当時の私は大学院生でした。

収入は安定しておらず、毎月の生活を乗り切るだけでも余裕があるとはいえない状況でした。

当然、

「車が廃車になったから、新しい車を現金で買おう」

と簡単にできるような経済状況ではありません。

一方で、生活するうえでは車も必要でした。

事故の相手から十分な補償を受けられる見込みもない。

自分で新しい車を購入する余裕もない。

そして、事故の処理をこれからどう進めればよいのかも分からない。

「この状況を、どうやって解決すればいいのだろう」

と、途方に暮れていました。

お金がないことへの不安だけではありません。

何をすればよいのか分からないことそのものが、大きな不安でした。

「弁護士費用特約に入っていますよね」と言われた

事故後、以前からお世話になっていた自動車工場で、自動車保険代理店の担当者に相談しました。

そこで言われたのが、

「弁護士費用特約に加入していますよね。一度、保険会社に相談してみてはどうでしょうか」

という言葉でした。

確認してみると、私は自分の自動車保険に弁護士費用特約を付けていました。

正直にいうと、事故が起きるまで、この特約について強く意識したことはありませんでした。

自動車保険に加入するとき、

「念のため付けておこう」

という程度の感覚だったと思います。

しかし、この特約があったことで、私は弁護士に相談できることになりました。

そもそも弁護士費用特約とは?

弁護士費用特約は、自動車事故などによって相手方へ損害賠償請求を行う必要が生じた場合などに、弁護士への相談や依頼にかかる費用を一定の範囲で補償する特約です。

ただし、補償される事故の範囲、対象となる人、弁護士費用の上限額などは、保険会社や契約内容によって異なります。

また、ここは今回の私の経験を読むうえで重要なところですが、

弁護士費用特約そのものが、壊れた車の買い替え費用を支払ってくれるわけではありません。

あくまで、弁護士への相談や依頼にかかる費用などに備えるための特約です。

当時の私の場合は、この特約をきっかけに専門家へ相談できたことが、その後の問題を解決していく大きな助けになりました。

「専門家に任せられる」ということが、何よりありがたかった

その後、私は弁護士事務所へ何度か足を運びました。

事故の状況を説明し、その後の対応について相談しました。

そして、相手方とのやり取りなどを専門家に任せられるようになりました。

ここで私が強く覚えているのは、

「自分一人で何とかしなくてもいいんだ」

と思えたことです。

事故に遭った直後は、

相手に何を伝えればよいのか。

どのような手続きをすればよいのか。

車の損害をどうすればよいのか。

これから自分はいくら負担しなければならないのか。

分からないことばかりでした。

しかし、専門家に相談できるようになったことで、

「ここから先は、詳しい人に相談しながら進めればいい」

と思えるようになりました。

この安心感は、今でもよく覚えています。

最終的には車を用意することができた

事故後の交渉や保険会社との調整を経て、最終的に私は大きな自己負担をすることなく、再び車を用意することができました。

当時の記憶では、自分の自動車保険も利用しながら問題を解決したと認識しています。

ただし、先ほど触れたとおり、この事故は10年近く前のことであり、現在、当時の保険契約や保険金支払いに関する書類を確認できません。

そのため、

どの補償がどのような条件で適用されたのか

等級の扱いが具体的にどうなったのか

などについて、現在の記憶だけをもとに正確な説明をすることは避けたいと思います。

そして、この記事で本当に伝えたいのも、

「この保険に入れば車を買ってもらえる」

という話ではありません。

私がこの経験から強く感じたのは、別のことでした。

私が買っていたのは「弁護士費用」だけではなかった

弁護士費用特約には、当然ながら金銭的な役割があります。

本来であれば自分で負担することになるかもしれない弁護士への相談費用や依頼費用などを、契約内容の範囲内で補償してもらえるからです。

しかし、実際に事故を経験した私が感じた価値は、それだけではありませんでした。

弁護士費用特約に加入していたことで、

自分一人で判断しなくていい。

相手との交渉を一人で背負わなくていい。

分からないことを専門家に相談できる。

という状態が、事故が起きる前から用意されていました。

言い換えれば、

「困ったときに頼れる人がいる状態」

を事前に準備していたとも考えられます。

事故が起きる前の私は、そんな価値まで考えて弁護士費用特約を付けていたわけではありません。

しかし、実際に自分ではどうにもならない状況に直面したことで、その意味を初めて実感しました。

保険は「期待値」だけでは測れないと思う

保険について考えるとき、

「支払う保険料に対して、どれくらい保険金を受け取れる可能性があるのか」

という金銭的な視点は重要です。

必要以上の保険に加入すれば、毎月の家計を圧迫する可能性もあります。

十分な貯蓄があれば、自分で対応できるリスクもあります。

その意味で、

「保険に入っておけば安心だから、何でも加入すればよい」

とは思いません。

一方で、今回の経験をしてからは、保険を金銭的な期待値だけで評価することにも違和感を持つようになりました。

人生では、

起こる確率は高くなくても、実際に起きたときには自分一人で対応することが難しい出来事

があります。

そんなときに、

「誰に相談すればよいかが決まっている」

「専門家の力を借りられる」

ということ自体に価値がある場合もあります。

保険を考えるときには、

「いくら受け取れるか」

だけでなく、

「その保険によって、どのような状態を用意できるのか」

という視点もあってよいのではないかと思います。

「安心を買う」とは、何でも保険に入ることではない

ここで一つ注意しておきたいことがあります。

私は今回の経験から、

「保険で安心を買うことには価値がある」

と感じています。

しかし、これは、

「安心のためなら、できるだけ多くの保険に加入した方がよい」

という意味ではありません。

保険には当然、保険料がかかります。

あらゆるリスクを保険でカバーしようとすれば、毎月の固定費は大きくなります。

そのため、

自分の貯蓄で対応できるリスクなのか。

起きたときの経済的な損失はどれくらい大きいのか。

自分一人では対応することが難しいリスクなのか。

保険料を払い続ける価値を自分は感じるのか。

こうしたことを考えながら、必要な保障を選ぶことが大切だと思います。

保険に入ることそのものが目的なのではなく、自分では抱えきれないリスクにどう備えるかを考える。

今回の事故は、そのことを私に強く意識させる出来事になりました。

保険の価値には「お金では測れない部分」もある

以前、生命保険について考えたときにも、私は似たことを感じました。

保険について数字だけで考えれば、

「十分な貯蓄があるなら、生命保険はいらないのではないか」

という考え方もできます。

それは非常に合理的な考え方の一つだと思います。

一方で、実際に家族を亡くした経験から考えると、私は保険には数字だけでは測れない役割もあると感じています。

今回の弁護士費用特約も、私にとっては同じでした。

保険金や補償額だけではなく、

「もし何か起きても、ここに頼ればよい」

と思えること。

それ自体が、保険の持つ一つの価値なのかもしれません。

まとめ|保険で「安心を買う」ということ

大学院生だった頃に経験した交通事故は、私にとって保険について考える大きなきっかけになりました。

相手が任意保険に加入していない。

車は廃車になる。

自分には新しい車を簡単に購入できるほどの経済的余裕がない。

そして、これから何をすればよいのかも分からない。

そんな状況の中で、弁護士費用特約に加入していたことで、専門家に相談することができました。

私にとって大きかったのは、

「自分一人で解決しなくてもよい」

と思えたことです。

保険の大切な役割の一つは、予期せぬ出来事による経済的な損失に備えることです。

しかし、それだけではなく、

自分では対応しきれない出来事が起きたときに、安心して頼れる状態をあらかじめ用意しておくこと

にも価値があるのだと思います。

もちろん、だからといって何でも保険に加入すればよいわけではありません。

自分で負担できるリスク。

自分では負担しきれないリスク。

お金だけでは解決しにくいリスク。

それぞれを考えながら、自分に必要な保障を選んでいく。

そのとき、

「いくら受け取れるのか」だけでなく、「この保険によって何を安心して任せられるようになるのか」

という視点も、保険を選ぶ一つの判断材料になるのではないでしょうか。

Money Literacy Labでは、こうした「数字だけでは測れないお金の役割」についても、これから丁寧に考えていきたいと思います。

※本記事は、筆者が10年近く前に経験した交通事故について、現在の記憶をもとに振り返ったものです。当時の保険契約書類等が手元にないため、事故後に適用された補償内容や保険金支払い、等級の取扱い等については、正確に再現できない部分があります。また、本記事は特定の保険会社、保険商品、特約等への加入を推奨するものではありません。弁護士費用特約の補償対象、利用条件、補償限度額、等級への影響などは、保険会社や契約内容、事故の状況等によって異なります。実際に事故が発生した場合や補償内容を確認する場合は、ご自身の保険証券・約款等を確認し、加入している保険会社や代理店等へお問い合わせください。

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この記事を書いた人

大学で外国語教育に携わるかたわら、お金について学び、実践しています。FP3級取得。Money Literacy Labでは、家計管理・投資・保険・税金などについて、自分自身の経験と学びをもとに発信しています。

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