以前の記事では、私が博士課程への進学にあたり、日本学生支援機構(JASSO)の貸与型奨学金を利用した経緯や、その制度について紹介しました。

今年の10月で、奨学金の返済を始めてちょうど2年になります。
毎月返済を続ける中で、改めて感じていることがあります。
それは、
私は、奨学金を借りたことを後悔していない
ということです。
もちろん、約300万円という金額は決して小さくありません。
毎月の返済がなくなれば、そのお金を貯蓄や投資、あるいは別のことに使うこともできます。
それでも、今振り返ってみると、私にとってあの300万円は、単なる「借金」だけではなかったように思います。
今回は、返済開始から2年が経った今だからこそ感じることを、自分なりに整理してみたいと思います。
博士課程へ進学したい。でも、お金がなかった
私は大学で英語を専攻し、その後、2年間の大学院修士課程へ進学しました。
修士課程では外国語習得のメカニズムについて研究し、1年目が終わる頃には、
「博士課程へ進学して、もっと研究を続けたい」
という気持ちが強くなっていました。
しかし、進学を考えたときに大きな壁となったのが、お金でした。
博士課程へ進学すれば、
- 学費
- 通学費
- 生活費
- 研究に必要な書籍代
など、多くの費用が必要になります。
研究を続けたい気持ちはありましたが、経済的な不安から、なかなか進学を決断できずにいました。
学振に挑戦。しかし結果は不採択
その頃、研究室の先輩から教えてもらったのが、日本学術振興会(JSPS)の特別研究員制度、いわゆる「学振」でした。
採用されれば研究奨励金や研究費の支援を受けることができ、返済する必要もありません。
研究者を目指す大学院生にとって、非常に魅力的な制度です。
もちろん、私も応募しました。
しかし、結果は不採択でした。
博士課程への進学を諦めるのか。
それとも、別の方法を探すのか。
私にとって、大きな岐路でした。
私が選んだのは300万円の奨学金でした
当時の私は、家族に経済的な援助をお願いできる状況ではありませんでした。
そこで私が選んだのが、
日本学生支援機構の貸与型奨学金
でした。
借りた金額は、約300万円。
今振り返れば、決して小さな金額ではありません。
しかし当時の私には、
「これ以外に博士課程へ進学する方法がない」
という思いがありました。
300万円という数字の重さ以上に、
研究者になる夢を諦めたくない
という気持ちの方が強かったのだと思います。
返済開始から2年。今の正直な気持ち
その後、私は博士課程を6年間かけて修了し、博士号を取得しました。
そして幸運にも、修了した年に大学の専任教員として採用されました。
現在は、毎月15,000円ずつ奨学金を返済しています。
今のところ、15,000円の返済によって生活そのものが苦しくなるという状況ではありません。
それでも、
「この15,000円がなければ、別のことに使えるのにな」
と思うことは正直あります。
1年間なら18万円。
返済が何年も続けば、決して小さな金額ではありません。
返済は、やはり返済です。
だからこそ、貸与型奨学金は誰にでも勧められるものではないと思っています。
返済義務がある以上、「借りられるから借りる」のではなく、その後の返済まで含めて考える必要があります。
それでも、私は奨学金を借りたことを後悔していません
それでも私は、あのとき奨学金を借りたことを後悔していません。
なぜなら、あの300万円は、
博士課程へ進学するという選択肢を得るためのお金
だったからです。
もし奨学金を借りていなければ、博士課程へ進学することも、研究者になることも、現在の大学教員という仕事に就くこともできなかったかもしれません。
もちろん、今の人生がすべて奨学金のおかげだというつもりはありません。
博士課程へ進学したからといって、必ず研究者になれるわけでもありません。
それでも、少なくとも私の場合、奨学金がなければ、その道に挑戦することすら難しかったと思います。
300万円は、返済しなければならないお金です。
しかし同時に、私にとっては、
人生の選択肢を広げるために必要だった投資
でもありました。
お金は人生の選択肢を広げるための手段
Money Literacy Labでは、投資や税金、社会保障制度などについて記事を書いています。
しかし、その目的は、
「少しでもお金を増やすこと」
だけではありません。
私がこのブログを通して考えたいのは、
お金は人生の選択肢を広げるための手段でもある
ということです。
お金を貯めること。
投資をすること。
税金や社会保障の制度を知ること。
必要であれば、お金を借りること。
これらはすべて、それ自体が目的なのではなく、自分がどのような人生を送りたいのかを実現するための手段なのだと思います。
以前紹介したICL手術でも、医療費控除という制度を知ることで、高額な手術についてより具体的に考えられるようになりました。

年金や社会保障制度を学んだことで、老後にどのように働き、どのように暮らしたいのかを考えるようにもなりました。
今回の奨学金も、私にとっては同じです。
制度を利用することで、
「研究者を目指す」
という人生の選択肢を残すことができました。
もちろん、奨学金には返済義務があります。
だからこそ、借りるかどうかは慎重に考える必要があります。
しかし、
「借金だから絶対に悪い」
あるいは、
「進学したいなら奨学金を借りるべき」
という単純な話でもないと思います。
大切なのは、
そのお金によって、自分は何を実現したいのか。
そして、
返済まで含めて、その選択に自分で納得できるのか。
ということではないでしょうか。
返済額だけでなく、その先にある人生を見る
FP3級を勉強してから、私はお金について考えるとき、「今月いくら得をするのか」「いくら手取りが残るのか」だけではなく、もう少し長い時間軸で考えるようになりました。
奨学金についても同じです。
毎月15,000円という返済額だけを見れば、当然、ない方が家計には余裕が生まれます。
しかし、その15,000円の返済がなぜ存在するのかまで時間をさかのぼって考えると、
博士課程へ進学するために約300万円を借りた
↓
博士課程で研究を続けた
↓
博士号を取得した
↓
大学教員として働くという現在につながった
という、自分の人生の流れがあります。
お金について考えるとき、目の前の支出だけを見るのではなく、
「そのお金によって、自分は何を得たのか」
まで含めて考える。
これも、私にとって大切なマネーリテラシーの一つなのだと思います。
こうした考え方は、FP3級を勉強する中で、お金を「今月の手取り」だけではなく「人生全体」の時間軸で見るようになったことともつながっています。私自身のお金の見方がどのように変わったのかについては、こちらの記事で詳しく振り返っています。

まとめ|300万円は、私に「選ぶ機会」を与えてくれた
返済を始めて2年が経ちました。
毎月15,000円の返済は、今も続いています。
正直、その負担を感じることもあります。
それでも、私はあのときの決断を後悔していません。
約300万円の奨学金は、返済義務のあるお金であると同時に、
研究者になるという夢に挑戦するための切符
だったからです。
お金は、人生の目的ではありません。
しかし、お金があること、そしてお金に関する制度を知っていることで、選べる人生があります。
だからこそMoney Literacy Labでは、制度やお金の知識を単なる「得をするためのテクニック」としてではなく、
自分らしい人生を選ぶための知識
として、これからも発信していきたいと思います。
※本記事は筆者自身の経験をもとに執筆しています。貸与型奨学金は返済義務のある制度であり、進学や借入の判断は家庭環境や将来設計によって異なります。本記事は奨学金の利用を推奨または否定するものではなく、一つの体験談・考え方としてお読みいただければ幸いです。

