「老後は何歳まで働こう。」
最近、このことを考える機会が少しずつ増えてきました。
「老後2,000万円問題」が話題になって以降、老後資金について考える人は増えました。また、高年齢者雇用安定法の改正により、企業には65歳までの雇用確保措置が義務づけられ、70歳までの就業機会を確保することも努力義務とされています。
平均寿命や健康寿命が延びる中で、「定年後も働く」という生き方は、これからますます身近なものになっていくのかもしれません。
私自身はまだ30代ですので、老後はずっと先の話です。
しかし、FP3級の勉強を通して「在職老齢年金」という制度を知り、お金のことだけではなく、
「老後にどのような働き方をしたいのか」
まで考えるようになりました。
今回は、在職老齢年金という制度を簡単に整理しながら、私自身が考える「老後の働き方」について書いてみたいと思います。
在職老齢年金を理解する前に、「二階建ての年金」を知る
在職老齢年金を理解するためには、まず日本の公的年金制度を簡単に整理しておく必要があります。
日本の公的年金は、よく「二階建て」の仕組みとして説明されます。
一階部分にあたるのが、老齢基礎年金です。
国民年金は、日本国内に住む20歳以上60歳未満の人が加入する制度で、一定の受給資格期間を満たした人は、原則として65歳から老齢基礎年金を受け取ります。
一方、二階部分にあたるのが老齢厚生年金です。
会社員や公務員など、厚生年金に加入していた人は、老齢基礎年金に加えて、加入期間や過去の報酬などに応じた老齢厚生年金を受け取ることができます。
つまり、厚生年金に加入して働いてきた人の場合、
- 老齢基礎年金
- 老齢厚生年金
という二つの年金を受け取ることになります。
そして、今回のテーマである「在職老齢年金」で調整の対象となるのは、このうち老齢厚生年金です。
老齢基礎年金は、在職老齢年金による支給停止の対象にはなりません。
国民年金については、学生時代に保険料の納付を猶予できる「学生納付特例制度」と、私自身がその期間の保険料を追納した経験についても、別の記事で詳しく紹介しています。


在職老齢年金とは?
在職老齢年金とは、60歳以降も厚生年金に加入して働きながら老齢厚生年金を受け取る場合に、賃金と老齢厚生年金の額に応じて、老齢厚生年金の一部または全部が支給停止となる仕組みです。
2026年4月から、この制度は大きく見直されました。
2026年度は、
老齢厚生年金の「基本月額」+「総報酬月額相当額」が月65万円以下であれば、老齢厚生年金は全額支給されます。
一方、この合計が65万円を超える場合には、
65万円を超えた部分の2分の1
が、老齢厚生年金から支給停止されます。
例えば、基本月額と総報酬月額相当額の合計が75万円なら、基準額を10万円上回っています。
この場合、その半分にあたる5万円が、老齢厚生年金から支給停止されるという考え方です。
なお、ここでいう「総報酬月額相当額」は、単純な毎月の給与だけではありません。
その月の標準報酬月額に、直近1年間の標準賞与額の合計を12で割った額を加えて計算します。
また、65万円という基準額は2026年度の金額であり、毎年度、賃金の変動に応じて改定されます。
ここで誤解したくないのは、
「働いたら年金がもらえなくなる」という制度ではない
ということです。
一定以上の収入がある場合に老齢厚生年金の支給額が調整される仕組みであり、老齢基礎年金はこの調整の対象ではありません。
2026年4月には基準額自体も51万円から65万円へ引き上げられ、以前よりも働きながら老齢厚生年金を受け取りやすい仕組みになりました。
在職老齢年金の仕組みや支給停止の条件については、別の記事で詳しく整理しています。制度そのものについて詳しく知りたい方は、こちらもあわせてご覧ください。

FP3級を勉強して、考え方が少し変わった
正直に言うと、FP3級を勉強する前の私は、この制度の存在を知りませんでした。
老後について考えるときも、
「健康で元気なら、できるだけ長く働きたい。」
その程度にしか考えていませんでした。
しかし、在職老齢年金という制度を知ってからは、考え方が少し変わりました。
それは、
「働くか、働かないか」ではなく、「どのように働くか」が大切なのではないか
と思うようになったことです。
フルタイムで働く。
勤務日数を減らして働く。
これまでとは違う仕事に挑戦する。
仕事以外の時間を増やしながら、自分のペースで働く。
制度を知ったことで、老後の働き方には、思っていた以上にさまざまな選択肢があることに気づきました。
私自身の老後を少し想像してみた
私自身も、元気であれば老後まで何らかの形で働き続けたいと思っています。
現在は大学教員として働いていますが、大学教員の世界では、定年を迎えた後も別の大学などで教育や研究を続ける先生もいます。
以前の私は、
「自分も元気なら、どこかで教え続けたい。」
と漠然と考えていました。
しかし今は、
- フルタイムで働き続けるのか
- 非常勤として教えるのか
- 大学以外の仕事にも挑戦するのか
- 仕事以外の時間を増やすのか
といったように、「働き方そのもの」を考えるようになりました。
もちろん、私が実際に年金を受け取る数十年後には、在職老齢年金を含め、現在の制度が大きく変わっている可能性があります。
だから、今の制度を前提として老後の働き方を決めようとは思っていません。
それでも、制度を知ったことが、
「自分はどんな老後を送りたいのだろう」
と考えるきっかけになったことは、私にとって大きな収穫でした。
「生活のため」だけではない働き方もある
私は、老後も何らかの形で仕事は続けたいと思っています。
もちろん、生活費を補うという理由もあります。
しかし、それ以上に、
社会とのつながりを持ち続けたい
という気持ちがあります。
最近は、将来の選択肢の一つとして全国通訳案内士にも興味を持っています。
私は旅行や歴史が好きで、現在は大学で英語教育に携わっています。
もし定年後、自分の好きなことや、これまで身につけてきた知識を生かしながら働くことができれば、それも一つの充実した生き方なのではないかと思っています。
実際にその道を選ぶかどうかは、まだ分かりません。
数十年後には、今とは全く違うことに興味を持っているかもしれません。
それでも、在職老齢年金という制度を知ったことで、
「何歳まで働くか」
だけではなく、
「どんな仕事を、どんなペースで続けたいか」
という視点を持つようになりました。
お金を学ぶことは、人生設計を学ぶこと
今回の記事を書きながら改めて感じたのは、FPで学ぶ知識は、「節税」や「資産運用」のためだけのものではないということです。
在職老齢年金という制度を知ったことで、
- 年金の仕組み
- 老後の収入
- セカンドキャリア
- 自分らしい働き方
まで考えるようになりました。
資格試験というと、どうしても「合格すること」が目的になりがちです。
しかし実際には、制度を知ることで、人生のさまざまな場面について落ち着いて考えられるようになることの方が、私にとっては大きな価値なのかもしれません。
今回の在職老齢年金も、
「老後も働いた方が得なのか」
という単純な損得だけで考える必要はないと思っています。
どれくらいの収入が必要なのか。
どれくらい仕事をしたいのか。
家族との時間や趣味の時間をどれくらい大切にしたいのか。
そして、どのような形で社会と関わり続けたいのか。
お金の制度を知ることは、こうしたことを考えるための材料にもなります。
Money Literacy Labが大切にしたいこと
Money Literacy Labでは、
「老後は働くべき」
「早くリタイアすべき」
といった一つの正解をお伝えしたいわけではありません。
私が大切にしたいのは、
知識があることで、自分なりの選択肢を考えられるようになること
です。
数十年後の私は、まだどこかで教壇に立っているかもしれません。
全国通訳案内士として旅行者をご案内しているかもしれません。
あるいは、今は想像もしていない仕事に挑戦しているかもしれません。
未来のことは分かりません。
それでも、制度を知り、選択肢を知っていることで、
「自分はどんな人生を送りたいのか」
を考えることはできます。
お金について学ぶことは、単にお金を増やすためだけのものではありません。
自分らしい人生を選ぶための判断軸をつくること。
それもまた、マネーリテラシーを身につける意味の一つなのではないかと、私は考えています。
Money Literacy Labでは、これからも「お金を増やす方法」だけではなく、「知識によって人生の選択肢を広げること」を大切にしながら、お金との向き合い方を考えていきたいと思います。
※本記事は筆者個人の学習内容と考えをもとに執筆しています。在職老齢年金の制度や支給停止基準額は、法改正や毎年度の改定などによって変更される場合があります。また、年金の受給額や働き方は一人ひとり異なります。制度を利用・検討される際は、日本年金機構や厚生労働省などの公的機関で最新の情報をご確認ください。

