在職老齢年金とは?仕組みや支給停止の条件をFP3級取得者がわかりやすく解説

「老後も働きたいけれど、年金は減ってしまうの?」

在職老齢年金という制度を初めて知ったとき、私が最初に抱いた疑問です。

近年は、定年後も働き続けるという選択肢が身近になっています。65歳までの雇用確保が企業に義務付けられ、70歳までの就業機会確保も努力義務とされていることもあり、「年金を受け取りながら働く」という働き方を考える人も少なくないでしょう。

そこで気になるのが、**「働きながら年金を受け取ると、年金はどうなるのか」**という点です。

私自身、FP3級の勉強をするまで、この仕組みを詳しく知りませんでした。

今回は、FP3級の学習をきっかけに知った「在職老齢年金」について、2026年度の制度をもとに、仕組みや支給停止の条件をできるだけわかりやすく整理します。

目次

在職老齢年金とは?

在職老齢年金とは、60歳以降も厚生年金に加入しながら働く人について、賃金と老齢厚生年金の額に応じて、老齢厚生年金の一部または全部が支給停止となる仕組みです。

「働くと年金がもらえなくなる」

というイメージを持つ方もいるかもしれませんが、働いているという理由だけで年金が支給停止になるわけではありません。

在職老齢年金では、老齢厚生年金の「基本月額」と、給与や賞与をもとに計算される「総報酬月額相当額」の合計がポイントになります。

この合計額が一定の基準を超えた場合に、老齢厚生年金の一部または全部が支給停止となります。

老齢基礎年金と老齢厚生年金の違い

在職老齢年金を理解するには、まず日本の公的年金制度について簡単に知っておく必要があります。

日本の公的年金は、よく「二階建て」の仕組みとして説明されます。

老齢基礎年金

老齢基礎年金は、国民年金から支給される年金です。

日本国内に住む20歳以上60歳未満の人は、原則として国民年金の被保険者となります。

会社員や公務員など厚生年金に加入している人も、国民年金の第2号被保険者として、この仕組みに含まれています。

老齢厚生年金

老齢厚生年金は、厚生年金保険の加入期間がある人が、一定の要件を満たした場合に老齢基礎年金に上乗せして受け取る年金です。

受給額は、厚生年金に加入していた期間や過去の報酬などによって変わります。

そして、ここで重要なのが、在職老齢年金による支給停止の対象となるのは老齢厚生年金であり、老齢基礎年金は支給停止の対象にならないという点です。

そのため、「働きながら年金を受け取ると、公的年金がすべて減ってしまう」というわけではありません。

支給停止になる条件は?

2026年度では、老齢厚生年金の「基本月額」と「総報酬月額相当額」の合計が月65万円を超える場合、超えた額の2分の1に相当する額が老齢厚生年金から支給停止されます。

ここでいう「基本月額」とは、加給年金額を除いた老齢厚生年金の年額を12で割った額です。

一方、「総報酬月額相当額」は、単純な毎月の給与額ではありません。

その月の標準報酬月額に、直近1年間の標準賞与額の合計を12で割った額を加えたものです。

つまり、毎月の給与だけではなく、賞与も含めて計算される点には注意が必要です。

例えば、基本月額と総報酬月額相当額の合計が75万円だったとします。

この場合、

75万円 − 65万円 = 10万円

となります。

65万円を超えた10万円の2分の1にあたる5万円が、老齢厚生年金から支給停止されることになります。

一方、基本月額と総報酬月額相当額の合計が65万円以下であれば、在職老齢年金による支給停止はありません。

なお、65万円という支給停止基準額は2026年度の金額です。

この基準額は賃金の変動などに応じて改定されるため、実際に制度を利用する際には、日本年金機構などで最新の情報を確認することが大切です。

「厚生年金の払い損」と言われることもあるけれど…

在職老齢年金について調べていると、

「厚生年金保険料を払いながら働いているのに、年金まで減るなら損なのでは?」

と感じる人もいるかもしれません。

確かに、老齢厚生年金の一部が支給停止になることだけを考えると、そのように感じるのも理解できます。

しかし、在職老齢年金によって年金が支給停止になることだけを見て、「働くと損」と単純に判断するのは難しいと思います。

厚生年金に加入しながら働き続ければ、その加入期間や報酬が年金額に反映され、将来受け取る老齢厚生年金の額が増える場合があります。

また、当然ながら、働くことによって給与という収入も得られます。

さらに、人によっては、

「仕事を通して社会とのつながりを持ちたい」

「これまで身につけてきた専門性を生かしたい」

「無理のない範囲で仕事を続けたい」

と考えることもあるでしょう。

そのため、在職老齢年金だけを見て「得か損か」を判断するのではなく、収入、年金、働き方、そして自分がどのような老後を送りたいのかを含めて考えることが大切だと思います。

どんな人が気にした方がいい制度なの?

在職老齢年金は、老後も働くすべての人の年金が必ず減る制度ではありません。

例えば、

  • 定年後もフルタイム勤務を続ける予定の人
  • 管理職や専門職として一定以上の収入を得ながら働く人
  • 定年後も再雇用などで厚生年金に加入して働く予定の人
  • 大学教員や医師など、年齢を重ねても専門職として働く可能性がある人

などは、一度制度の仕組みを知っておく価値があるでしょう。

一方で、基本月額と総報酬月額相当額の合計が支給停止基準額以下であれば、在職老齢年金による支給停止はありません。

「老後に働いたら年金が減ってしまう」と必要以上に心配するのではなく、まずは制度の仕組みを知り、自分の場合はどのような影響がありそうなのかを考えることが大切です。

FP3級を勉強して感じたこと

私自身、この制度を知るまでは、

「老後も元気なら働き続けたい」

と漠然と考えていました。

しかし、FP3級の勉強を通して在職老齢年金という制度を知ったことで、

「何歳まで働くか」

だけではなく、

「どのような働き方をしたいのか」

まで考えるようになりました。

老後もフルタイムで働く。

勤務日数を減らして働く。

これまでの専門性を生かして別の仕事をする。

あるいは、これまでとはまったく違う仕事に挑戦してみる。

働き方には、さまざまな選択肢があります。

在職老齢年金を知ったことは、単に「年金がいくら減るのか」を知るだけではなく、自分が将来どのように働き、どのように暮らしたいのかを考えるきっかけになりました。

お金の制度について知ることは、必ずしも「一番得する方法」を探すことだけではないと思います。

知識を持つことで選択肢を理解し、その中から自分に合ったものを選べるようになる。

FP3級の勉強を始めてから、私はそのことを何度も感じています。

まとめ

在職老齢年金は、

「働くと年金がもらえなくなる制度」

ではありません。

2026年度では、老齢厚生年金の基本月額と総報酬月額相当額の合計が月65万円を超えた場合に、超過額の2分の1に相当する額が老齢厚生年金から支給停止される仕組みです。

また、在職老齢年金による支給停止の対象となるのは老齢厚生年金であり、老齢基礎年金は対象になりません。

制度そのものを理解することも大切ですが、私にとって在職老齢年金を学んだことは、

「自分は老後、どのような働き方をしたいのか」

を考えるきっかけにもなりました。

Money Literacy Labでは、お金の制度を単に「得をするための知識」としてではなく、自分らしい人生設計を考えるための知識として整理していきたいと思っています。

老後の働き方について、私自身が在職老齢年金を知ったことをきっかけに考えたことは、別の記事で詳しく書いています。

※本記事は、FP3級の学習内容および2026年度の公的年金制度をもとに、筆者自身が制度について学んだ内容を整理したものです。支給停止基準額を含む制度内容は、法改正や年度によって変更される場合があります。具体的な年金額や働き方について検討する際は、日本年金機構や厚生労働省などの公的機関で最新の情報をご確認ください。

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この記事を書いた人

大学で外国語教育に携わるかたわら、お金について学び、実践しています。FP3級取得。Money Literacy Labでは、家計管理・投資・保険・税金などについて、自分自身の経験と学びをもとに発信しています。

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